長年にわたって連続で増配を続けている株式(銘柄)のランキングです。順位と年数、配当利回りを一覧にしました。いずれも株主還元の一環として配当を重視し、リーマンショックやコロナ渦の時も増配を維持した企業です。 1位は花王の32年連続、2位はリコーリースの27年連続です。安定性と成長性の両方の面で優れた優良株が多いです。 四季報やヤフーファイナンス、スナップアップ投資顧問のレポートなどを参考にリストにしました。
連続増配の企業ランキング(2022年7月)
順位 | 連続増配年数 | 銘柄 | 記録達成の決算期 | 配当利回り (予想) |
概況 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 32年 | 花王 | 21年 12 月期 |
2.93% 現在→ |
1989年から増配を続ける。日本の上場株で最長の増配記録を誇っている。バブル崩壊時も、リーマンショックのときも、絶えることなく増配を続けてきた。30年間で1株あたりの配当は18倍以上になった。(詳細↓) |
2位 | 27年 | リコーリース ※2000年3月期の株式分割による実質増配を含む |
22年 3 月期 |
3.87% 現在→ |
配当据え置きを見込んでいた年もあったが、そのたびに予想を上回る利益を確保し、増配を実現してきた。集金代行などの手数料ビジネスが堅調。リース・割賦事業も収益率が改善している。 |
3位 | 24年 | SPK | 22年 3 月期 |
3.24% 現在→ |
自動車整備部品等の専門商社。北米やアジア向け建機車両が堅調。配当については、配当性向が50%を超えるまで増配を継続するとの方針を明らかにしている。今後も増配が期待できる。 |
4位 | 23年 | 小林製薬 | 21年 12 月期 |
1.08% 現在→ |
芳香消臭剤や医薬品が主力。漢方とスキンケアが着実に成長して、海外も中国を中心に伸びている。 |
三菱HCキャピタル (旧:三菱UFJリース) |
22年 3 月期 |
4.95% 現在→ |
不動産がけん引し、航空機リースなどの契約実行が増加。配当性向を30%まで引き上げる方針。 | ||
6位 | 22年 | ユー・エス・エス | 22年 3 月期 |
2.87% 現在→ |
中古車オークションで国内シェアを39%まで拡大。成約台数が伸び、手数料の値上げ効果も。配当性向は50%以上とする方針。 |
7位 | 21年 | 沖縄セルラー電話 | 22年 3 月期 |
3.17% 現在→ |
スタンダード市場の主力株。同市場で時価総額10位前後で推移している。auに加え料金が安いUQモバイルの両ブランドで純利益が伸びる傾向。家庭向けの光ファイバー事業も沖縄県内の契約シェアが上昇傾向にある。 |
トランコム | 22年 3 月期 |
2.25% 現在→ |
エリアを拡大した物流サービス(求貨求車)が成長。物流センター運営は日用雑貨等を拡充。増配ながら配当性向が低下。余力十分。 | ||
プラネット | 22年 7 月期 |
2.82% 現在→ |
メーカーと卸との受発注、請求などのデータ交換を提供。 | ||
10位 | 20年 | 芙蓉総合リース | 22年 3 月期 |
3.39% 現在→ |
5年で1株配当を2倍超にしたが、配当性向は余力十分。中計では海外の拡大により営業資産残高を1.5倍に拡大する方針。 |
みずほリース (旧興銀リース) |
22年 3 月期 |
3.13% 現在→ |
設備投資ニーズを取り込み、連続の最高益更新。リースは産業・工作機械が増加。利益増と配当性向の上昇による増配が見込める。 | ||
ユニ・チャーム | 21年 12 月期 |
0.91% 現在→ |
ベビー、フェミニンともアジアを中心とした海外が堅調。自社株買いを含めた総還元性向は50%めど。 | ||
リンナイ | 22年 3 月期 |
1.66% 現在→ |
売上高の約57%が給湯器。海外や新分野の強化を標榜。配当性向が低く余力も十分。 | ||
KDDI | 22年 3 月期 |
3.09% 現在→ |
自社株取得を含め、株主還元に積極的。通信は値下げなど競争が激化するが、証券や銀行などのM&Aによりサービスを拡大へ。 | ||
東京センチュリー | 22年 3 月期 |
3.43% 現在→ |
伊藤忠商事の傘下のリース会社。(詳細↓) | ||
サンドラッグ | 22年 3 月期 |
2.64% 現在→ |
全国規模で展開するドラッグストアの大手。競争激化、出店余地の縮小、人手不足による人件費上昇など経営環境は悪化している。課題は出店増で売り上げが伸ばせるかどうかだろう。 | ||
17位 | 19年 | パン・パシフィック・インターナショナルHD | 22年 6 月期 |
0.90% 現在→ |
旧ドン・キホーテ。主力ドンキの価格競争力が強み。(詳細↓) |
サンエー | 22年 2 月期 |
1.51% 現在→ |
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19位 | 18年 | ニトリ・ホールディングス | 22年 3 月期 |
1.18% 現在→ |
既存店売り上げが順調。商品開発力向上を背景に中長期での成長が見込まれている。 |
アルフレッサHD | 22年 3 月期 |
3.25% 現在→ |
メーカーと卸との受発注、請求などのデータ交換を提供。 | ||
ロート製薬 | 22年 3 月期 |
1.05% 現在→ |
アイケア分野では、高機能眼科用薬が好調。(詳細↓) | ||
栗田工業 | 22年 3 月期 |
1.57% 現在→ |
総合水処理分野のトップ。令和の新天皇が水問題を研究されてきたこととこあり、「令和関連銘柄」の一つとして注目されている。 | ||
高速 | 22年 3 月期 |
3.11% 現在→ |
食品向け軽包装資材の専門商社。AI導入で物流作業を効率化へ。 | ||
クスリのアオキHD ※2016年の持ち株会社化前の期間も含む |
22年 5 月期 |
0.35% 現在→ |
北陸3県へのドミナント(特定地域への集中)方式の新規出店が持ち味。(詳細↓) |
※直近の決算期の配当については、予想値が含まれています。
ランキング上位の銘柄ピックアップ
連続増配ランキングの上位の企業のうち、特徴的な銘柄を紹介します。
1位:花王(32年連続)
1989年から増配を続ける。日本の上場株で最長の増配記録を誇っている。バブル崩壊時も、リーマンショックのときも、絶えることなく増配を続けてきた。30年間で1株あたりの配当は18倍以上になった。
1990年代初頭、「配当性向30%」を当面の社内ルールとして適用した。このころ東京証券取引所が株主配分の目安として配当性向30%の指針を打ち出したのがきっかけだった。当時のバブル相場では、値上がり益ばかりが注目され、配当方針は軽視される風潮があった。
しかし、花王は一定の配当性向を守る方針を決め、その後も堅持してきた。配当性向が同じなら増益が続く限り、増配となる。増益を続けたことで、結果的に配当は上積みされていった。ただし、現在は配当性向の目標値は特に定められていない。
ディフェンシブ銘柄の代表格
花王は投資家の間では「日本企業の中で最もディフェンシブな銘柄」と言われる。金融不安が広がろうと、戦争が起きようと、業績の安定性という意味では、花王ほど信頼感のある企業は少ない。このため、機関投資家もポートフォリオに組み入れやすい。
花王の経営陣やIR部門も安定性を重視する姿勢で知られる。株主にとって自社の銘柄の魅力が、着実性や安定性にあると自覚しているようだ。「『高い値上がり益を狙えないときでも、安心して保有できる株』とうい期待に応えることが責任」というIR担当者のコメントもある。
また、自社株買いにも熱心な会社でもある。その一方で、地道な研究開発を続ける硬派な会社としても評価されている。
10位:東京センチュリー(20年連続)
伊藤忠商事の傘下のリース会社。旧第一勧業銀行系。
グループの米航空機リース会社、アビエーションキャピタルグループ(ACG)を完全子会社化。ACGの親会社である米国大手生保・パシフィックライフからACG株の75.5%を30億ドル(約3200億円)で取得した。ACGは保有管理機体数ベースで世界11位の規模。子会社化により航空会社などとの相乗効果が期待される。
17位:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(19年連続)
主力のドン・キホーテは価格競争力が強いため、消費者心理の悪化が市場シェアの拡大につながる傾向が顕著になっている。
「ユニー」から「ドン・キホーテ」などへの転換効果が好調。2018年に転換した6店は転換2年目においても転換前に比べて売上高は2倍に増えた。2019年に転換した16店も転換後、売上高が倍増。粗利益は1.8倍に伸びた。
19位:ロート製薬(18年連続)
アイケア分野では、高機能眼科用薬が好調。スキンケア分野では高級路線の「オバジC 酵素洗顔パウダー」などが引き続き支持されている。日やけ止めの新製品「スキンアクアトーンアップUVエッセンス」も堅い売れ行きを見せている。
インバウンド(訪日外国人)需要も残っており、「メラノCC 薬用しみ集中対策美容液」などは人気が根強いという。 国内では目薬「ロートリセ」でセーラームーンと、ボディソープで北斗の拳などとコラボレーション商品で新規ユーザーを獲得するマーケティング功を奏した。海外でも、米国、欧州、アジアそれぞれで強みを持っている。
19位:クスリのアオキホールディングス(18年連続)
ドミナント(特定地域への集中)方式の新規出店が持ち味。地元の石川県など北陸地方でトップの強さを誇る。2010年代半ばからの積極出店で急拡大した。
ドラッグストアでは取扱商品による差別化が困難なため、顧客の支持を得るには豊富な商品知識や接客販売力を備えた「人材の育成」が不可欠となることから、従業員教育に力を入れてきた。一方で、育児中の正社員からマタハラ裁判を起こされた。
創業家のチーム経営に評価
創業一族によるチーム経営は高く評価されており、兄の青木桂生会長が長期トレンドを先取りし、ありたい業態をデザインして改革課題を生み出す。弟の青木保外・前社長が、次々と課題を解決し、会社経営をしっかりと固めた。2014年から社長を務める宏憲(ひろのり)氏は桂生会長の長男で、成長路線を堅持している。(有宗良治)